tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

現実知らずの思い込み、働き方改革

2018年03月31日 22時04分02秒 | 労働
現実知らずの思い込み、働き方改革
 絶対多数で「働き方改革」も押し通すというのでしょう。与党は早くそちらに行きたいようです。
 労働時間短縮には私も基本的には賛成です。ただし短ければいいというものではありません。人は仕事をすることによって育成され成長します。法律では残業時間の上限や、インターバル性を定め、あとは企業の人事労務管理に任せればいいと考えます。

 問題は、労働移動の促進、特に大きな問題は同一労働・同一賃金です。
基本論から言えば、「雇用」と言えば皆同じと思うのかもしれませんが、「雇用の在り方」には、大きく2種類あります。

 これは企業(あるいは組織)というものの在り方と結びついたものですが、
① 欧米流:企業は職務の集積体である:職務中心主義、
② 日本流:企業は人間集団である:人間中心主義、
という事になるでしょう。
欧米流では、例えば、研磨工が足りなければ、適切な技能レベルの研磨工を募集して採用します。賃金は職務給で決まっています。中間管理職が辞めれば、経験のある中間管理職を募集、採用します。職務給です。時には社長も募集します。「年収いくらいくらで社長募集」とへッドハンティング会社に頼んで探してもらいます。

 職務があって、人がいないから、その職務が出来る人を採用するのです。職務給が当たり前です。職務給は業界や地域でマーケットが出来ていて、その情報は行き渡っていますから、基本的に同一労働同一賃金です。     
賃金にプラスαがあるとすれば、「job and performance」のパフォーマンスの方でプラス分が査定されるでしょう。

日本流では、採用するときは配属は決まっていません。新卒一括採用です。仕事にはみんな素人で、入社が決まれば、会社とは、仕事とは何かなどとオリエンテーションを受け、OJTで先輩から仕事を教わり、だんだん1人前になっていきます。

管理職も、経営者も、基本的に内部昇進で、無暗に外部採用などすると、内部のモラールが落ちて企業のマイナスになります。
賃金、つまり初任給は新卒マーケットで決まります。初任給は低く、仕事に習熟するにしたがって上がっていきます。職能資格給が一般的です。同じ仕事をしていても、1年先輩の方が高いのが普通です。これが本来の日本企業の賃金制度です。

 こうした日本の企業にも、この所、欧米流の従業員が増えてきました。パート、アルバイト等の非正規従業員です。
 もともとは会社に縛られる正社員にはなりたくなく、自分の都合を重視し、働きたいときに働いて、それなりの収入を得たいと考える人達で、家計の責任者ではない人達です。(ただし現状は、正規で働きたいが正規になれない多くの非正規従業員がいます。これは問題です。)

 そして、非正規の人たちは、企業が、「これこれの職務の人募集」という求人広告業を見て職探しをし、賃金の相場は業種・職種や働く時間帯などで、業種や地域のマーケットで決まっています。これはすでに同一労働同一賃金の世界です

 というわけで、日本では今、伝統的な新卒一括採用という人間集団としての企業を担う従業員(正規従業員)と特定の職務遂行のために雇用された欧米型の従業員(非正規従業員)が併存しているのです。

 長くなるので後は次回にしますが、こうした現状の中で、「同一労働・同一賃金」の意味する所は何で、何を目指して安倍政権は「同一労働同一賃金」をやろうとしているのか、
合理的な説明のできる人は恐らくいないのではないでしょうか。

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